Ⅱ:決っして忘れられない九月一日:高倉靖子(河野富子従姉妹)
あれから早や一年五ヶ月も経った。
一日の仕事を終え、帰宅してテレビのスイッチを入れた瞬間、ニュースで流れる画面に、「ソ連軍用機に撃墜された大韓航空機KAL007の日本人乗客の氏名は・・・・・・」と言うアナウンサーの声に聴き耳をたてると、なんと河野富子と出ているではありませんか。えッ!!! まさか! 富ちゃんが・・・・・・同姓同名っていくらでもいるから、きっと従姉妹の富ちゃんではないだろう・・・・・と自分に言い聞かせながらテレビを民間放送に回したのです。するとどうでしょう。叔母が泣きながら記者会見を受けているではありませんか。
そんな馬鹿な!! 富ちゃんが乗り合わせていた航空機が撃墜されたなんて。―それは、 今でも決っして信じられるものではありません。
これから結婚し、第二の人生をスタートしようとする若い命が、ソ連機にいかなる理由があるにせよ、こんな無惨な形で打ち落されていいものでしょうか!!
人間の命ってこんなに簡単に消されるものでしょうか!
命がどんなに尊いものか判っているのでしょうか。自分の命を守る事だけが命の尊さだと思い込んでいるのでしょうか。
結婚し、可愛い赤ちゃんを産み、大きく育てて良い母親になる ―こんな夢を描きながら生きてきた富ちゃん。
あの寒い、冷たい海の底で泣きつづけているに違いありません。
わかって欲しいと思います。遺族の者が毎日どんな気持ちで過ごしているのかを!!!
遺体も遺留品も全く確認できないなんて納得できません。
富ちゃんへ
富ちゃん、どうしたの? 電話で言ってくれたじゃない。「一月の同窓会には、きっといくからね!!」って。
あんなに元気な声で言ったはずなのに・・・・・・
「友達みんなで昔話に花を咲かせよう」って言ったじゃない。あの時の電話を信じて待っているのよ。
一度でいい、富ちゃんの笑顔を見せてね。いつでもいいから、きっとよ、きっとね。まってるわ。
