やきもの夢工房【トトロの森】岡井 仁子


岡井仁子の『やきもの夢工房』

トトロの森

〒880-1224

宮崎県東諸県郡 国富町深年4001-2

Tel. & Fax. 0985-78-1171

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岡井 仁子 インターネット作品展

 作品の中から一部を掲載しております。ご覧になった感想などを頂けるとありがたく存じます。

陶壷 『神明の祭器』

「神明の祭器」の写真

現代の『祭器』について

 「神明は日月にひとしい」という言葉があります。文字に即して解釈すれば、神様の明察は天地の隅々まで及ぶ、という意味でしょう。日本の神社では、この「神明」が天照大神をあらわす称号として用いられているのも尤もなことです。

 ところで、陶磁器の歴史をたどっていきますと「明器」というジャンルが現れます。緑・褐・黄のあざやかな三色に彩られた唐三彩がその代表的な作例で、王侯貴族の死後の世界にささげられました。この「明器」は古代中国の思想にもとづく《神明の祭器》の略です。

 このように、死後の世界を、暗くさびしいものとしてではなく、神様の明察に守られた寛やかな世界だと考える死生観に私は惹かれています。

 また、私の窯が、神話のふるさとの日向の一隅にあることも、さまざまな御縁の導きのように思えてなりません。

 神明の祭器が青銅や三彩で作られた歴史に学びながら《現代の祭器》に取り組んで見ました。

 亡き人を偲ぶよすがを明るいリビングに共に置いて、より親しく語り合う暮しを、私は思い描いているのです。

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陶壷 『海ざくろ』

「海ざくろ」の写真

 ぱっかりと口を開き、緑色のやゝ荒い肌を持つ壷を、私は「海ざくろ」と名付けました。
 ザクロは、日本の秋に熟す果物です。厚い皮の中に、甘酸っぱい味の小さな実がぎっしり詰まっています。

 このザクロについて、東洋と西洋においてそれぞれ古い時代からの物語が伝えられています。
 インドに発する仏教説話では、鬼子母神伝説と結びついています。
 他人の子をさらっていた鬼のような母親が釈迦に同じ仕置きを受けてきびしく戒められ、その後は、母と子の守り神になったといい、その鬼子母神をシンポライズするのがザクロです。
 一方西洋では、ザクロは、冥府の食物とする古代の思想があり、死からの復活のシンボルとされています。

 私は大切な息子を、1983年大韓航空機事件によって失いました。息子はKAL機007便の乗客乗員269人とともに、いまなおサハリン沖の海から還ってまいりません。
 わが子が行方しれずになり、狂気のように探し求めた鬼子母神の痛切な苦悩と悲しみは、そのまま私の心であります。
 また、遺体の遺品も還らないわが息子「真」が、私の前に復活してくる日を待ち続ける気持ちも、消えることのない祈りであります。
 この気持ちをこめて《海ざくろ》を陶器で制作しました。

 開いた口は、犠牲者の声なき声をシンポライズし、暗緑色に泡立つ肌は、犠牲者が没した海を表しています。
 ザクロが熱し始める九月に海に消えた269人の切ない声が、この「海ざくろ」から世界の人々の耳に届くことを祈っています。

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陶壷 『珠うしお』

「珠うしお」の写真

 「掌中の珠をうしなう」という言葉が古くから伝えられています。

 愛する子供をうしなった親の苦しみをあらわす言葉です。
 大切に大切に、てのひらに包みこむようして育てたわが子が、思いがけないできごとによって奪い去られた親の悲しみは、時代がどんなに変わろうとも、決して消えもしないし、変わりもしません。

 私たちの愛する長男夫妻・岡井真と葉子は、1983年 9月 1日に起きた大韓航空機撃墜事件で、サハリン島沖の海中深く沈められ、いまなお行くえも知れません。
 私たちは、文字通り「掌中の珠」をうしなった悲しみと苦しみを背負いながら、せめてどこに沈んでいるのかだけでも知りたいと念じつつ、毎日を週ごしています。
 この陶器の壷はその想いを込めて作ったものです。

 「珠(たま)」は「魂(たま)」と同じ語源だと聞いています。
 かけがえのない「珠」をかたどった壺は、同時に、事件の犠牲者の「魂」をも表しています。母親の懐に戻ってくることができない魂の無念が、この形に込められています。

 珠は真珠です。美しい真珠は、美しい円満な形を持っています。けれども、この壷の真珠は悲しみと苦しみで張り裂けています。家族とも友人とも行き来できない魂の苦痛の叫びで引き裂かれているのです。
 真珠は母貝に抱かれ、潮に守られて育ちます。潮の満ち引きは、生きとし生きるものすべての根源です。だが、生きる力と意思を無慙に奪われたものの遺族にとっては、日ごと夜ごとに押し寄せる悲哀のくりかえしに他なりません。
 269人の命を奪った事件を風化させることなく、愛する人への限りない想いをいつまでもどこまでも伝えていくために、この壷を「珠うしお」と名付けました。

 さらに、この壷には、もうひとつの想いが託されています。色も生味も、縄文時代の土器の祈りの姿を映しています。
 縄文土器は日本列島からサハリン、オホーツク海域、そしてアラスカにまで及んだ古代のすぐれた知恵の所産です。国境のへだてもなく、人々の祈りと暮らしのために作られました。これは、不思議にも撃墜された旅客機の航跡と重なっています。
 縄文土器の姿を映すことによって、旅客機の航跡の下に広がる地域の人々と平和の願いを実現するために手をとりあうことができるならば……と、思いを重ねてお届けします。


 他の作品は、こちらになっております。画像情報が多いため、表示する際に多少お時間を要します。あらかじめご了承ください。

岡井 仁子 作品集
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