鎮魂の炎 -大韓航空機撃墜事件を追悼して(古屋かつみさん)
なにゆえのこの不条理ぞサハリンの上空に消えし大韓航空機
サハリンの空に消えゆく飛行雲子のまぼろしが手を振っている
たまゆらもこころ休まず仰ぎみる一直線に飛行機雲が
オホーツクの時の岸辺に打ち寄せる魂(たま)の光を胸に抱きぬ
鎮魂の野焼きはじめて十九年母の祈りの尽きることなし
雪しんしん祈りの輪へと降りしきり鎮魂の炎天をつらぬく
ハーモニカで奏すアメージング・グレース夜空を焦がす追悼の火へ
きさらぎの夜のしじまに飛ぶ火の粉帰らざる君の声が聞こえる
帰らざるひとの面影浮かびきて鎮魂野焼き消ゆることなし
野焼きの火凍てつく天をあかあかと世界の平和を祈りてをりぬ
(ふるや かつみ)
【出典:文芸オホーツク 2010 第19号 p84、85】
