Ⅳ-10:命の重さを:飯野フジ子(田中ケイ子妹)

飯野フジ子(田中ケイ子妹)

 あの信じがたい悪夢のような出来事から、早や半年余り過ぎようとしています。私は亡くなった田中ケイ子の妹です。私達は三人姉妹で、ケイ子は真中でした。父は私達が小さい頃亡くなり、私達は母親一人で育てられました。姉は小さい頃から、根性があり、又、大変快活で明るい性格でした。当時山梨の大学のダンスの講師をしていたのですが、学生達にも大変慕われていたようです。一昨年の四月から一年間アメリカに留学し、去年の八月に又再度渡米しての帰りに事故にあってしまいました。事故直後はまったく信じられなくて、死んでしまったのか、いや生きて帰ってくるのではないかという思いが半々位でした。でもだんだんと日が過つにつれて、もうだめかなという絶望的な気持になってきました。それにつれて、いろんな思い出が、思い出され、時々は今でも死んでしまったなどととても信じられないようにはっとする事があり、なんとも複雑な悲しい日々を送っています。どれ程多くの人達が泣いている事か! 一人の人間の命というものは、そんなに軽いものではない。死んでしまえばその人間は、もう二度と帰ってこないのです。どんな人間にも親があり、肉親がいるはずです。自分達の身にふりかえて考えてみる事はできないか。この人道上決して許されない事件に対して、日毎に努りと悲しみが増してくるのをどうにも仕様がありません。一日も早く慰霊碑を建て、亡くなった人達の冥福を祈りたい気持で一杯です。

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