Ⅳ-8:姉を偲んで:新沼晃子(スティーブンス浩子妹)

新沼晃子(スティーブンス浩子妹)

 九月一日、一年振りに姉に会える日だった。カレンダーの数字を一つ一つ×の字で消して楽しみにしていた日。今、思えば、何故か昨日までとはうってかわって小雨の降る日だった。確かにそれはその日の不幸を無言で伝えていたのだ。

 午前中に偶然つけたテレビからのニュース、大韓航空機行方不明の報はまるで他人事のようだったけれど、ほどなくその飛行機こそが姉の乗った飛行機だと確認した時、信じられなかった。それから一転してソ連への強制着陸の第二報、嬉しくて嬉しくて涙がボロボロと頼を流れるのを感じながら『心配ばっかりかけてバカ」って言いながら心の中で良かったと全ての人に感謝していた。がそれもつかのま、三時過ぎにはソ連による撃墜の可能性が報じられた。唯、その日は泣いていた。泣くしかなかった。泣きながら、あの時姉にこうしておけ ば、ああしておけば、と後悔の念ばかりが心に浮かび私を苛んだ。何も知らずにいる猫は不思議そうに私を見ていた。いっそ気が狂いたかった。何もかも忘れたかった。

 あれからはや半年、今でも私は自分の姉と死がピッタリと重ならない。月に一度、必ずきていた姉の手紙をまるで奇跡を祈るような気持ちで、来るはずがないとわかっていても、いまだ待っている。

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