Ⅰ-5:事件の原因にみる背景:新沼裕康(スティーブンス浩子、義弟)

新沼裕康(スティーブンス浩子、義弟)

 九月一日、結婚式を十日後に控え忙がしい毎日を過ごしておりました。本来出席しているはずの義姉のいないまま式は行われました。その夜は帝国ホテルでの遺族会発足に向けての話し合いが皆の複雑な心のうちに熱く論ぜられました。

 私にとって一生忘れられない、忘れてはならない一日となりました。

 何故KALは、ソ連側空に進入したのか。―これについて色々と多くの説が述べられるなか、その解明の糸口となるのではないかと期待されていたブラックボックスの回収も不可能となってしまった現在全ての説が推論の域を出ずにいる事は、否めません。

 私の考えも単に想像でしかありませんし、全くの素人ではありますが、私なりにこの事件の原因、背景について意見を述べさせていただきたいと思います。

 結論から言って、私はこの事件の原因を、KAL側の燃料節約にあったのではないかと考えています。コンピューターの故障・入力ミス説・スパイ説・誘導電波説等もあります。コンピュータ故障・入力ミスの場合、KAL後には最新の三台のコンピュータが装備されていたと報道されており、同時に三台全部が故障するのは考えられないし、入力ミスも例え何かの間違いでミスがあったとしても、何度も同じ航路を往復しているベテランのパイロットが、しかもKALのパイロットは技術的に世界でも指おりと言われているが、気づかなかったのでしょうか?

 誘導電波説に関しても、航路を正確にしているなら、逸脱し始めている、また、しているという事は容易にわかるはずであり、それを何故、アンカレッジや成田にさも正常飛行の様に連絡していたのか、疑問である。パイロットが全員いねむりでもしていたのなら気がつかなかったでしょうが・・・・・。また、ソ連に何故誘導電波の必要性があったのかはなはだ疑問です。

 次にスパイ説を否定する理由として、仮りにあの007便がその様な任務を帯びていたとして、はたして、どれ程の情報が得られるでしょうか。衛星を使った方がもっと正確且つ安全ではないでしょうか。

 では何故、この様なKALの航路逸脱をアメリカの基地はKALに直接連絡しようとしなかったのか。もしKAL側の燃料節約によって航路逸脱が為されたのならば、次の様に思われます。燃料節約による多少の航路逸脱は空の取締り官には大目にみてもらえたのではないでしょうか。多少のズレは日常茶飯事で、基地側も黙認していたのだと思われます。燃料節約―最短航路を故意に、意図的に選んだ。それが優秀なパイロットとしての誇りであったのではないか。乗客を安全に目的地へ運ぶという大きな第一の義務は、故に達せられないのであって、KAL側の事に関する起責は明らかである。

 加えてソ連の非人間的な行為も罰せられなければならないと思います。米ソ間の情報戦争の激化がソ連に神経質な行動をとらせたとも考えられるのではないでしょうか。キリスト教国でありながら人命をこうも軽く扱うその行為は政治・文化・社会制度など国境を越えた域で、地球上の人間としてソ連は最も深くその罪を感じなければならない。

 事件の早期解決を切に希望し、筆を置きます。

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