Ⅰ-3:大韓航空〇〇七便機長の重い責任:小林啓一郎 (小林正一·郁子長男)

小林啓一郎 (小林正一·郁子長男)

昨年九月一日の事故発生以来はや八ヶ月が経とうとしている。その間、大韓航空(KAL)は事故原因として、ソ連がアジア人蔑視思想に基づいて事故機に誘導電波を出してソ連領空内に誘い込み、その後に撃墜した、という荒唐無稽な説に固執し、自社の責任を一切認めようとしていない。しかも、この電波誘導説の根拠を何一つ提示できないのである。

あのような特異な不幸な事故については、再発防止の為にも事故原因の徹底的究明が不可欠である。はたして実際KALには事故に対する責任がないのであろうか?いろいろの観点から考えてみたが、その可能性は大きくなるどころか、考えれば考えるほど事故機の機長の乗務に関する疑惑の念が膨れあがる一方である。

外から飛行機に向けて電波を発射してレーダーに映る地形を変えようとすると、飛行機自身の出したレーダー反射電波よりかなり強い電波が必要となり、そのような電波を受けると、レーダーには異った地形が映るのではなく、妨害電波の飛来する方向の画面部分が真白になり、異常が観測されるはずである。また仮に異なる地形を映し出せても、異常に強い電波が返ってきたことに相当するため、画面全体が白くなってしまい、やはり異常が観測されるはずである。

次に、事故機のレーダー電波とは異なる波長の電波でINS等の操縦装置を狂わすことができたとしても、今度はレーダーには実際の地形が映っているのであるから航路逸脱が感知されたはずであり、わずかのずれはあってもすぐに元のコースに戻れるのである。その際、もしレーダーが不調であったなら、無線を通じて時折位置確認をすればよい(撃墜直前まで事故機は東京と正常に交信している)のであるが、そのような大きな故障は無線連絡されていない。

 航路R-20の飛行に際しては、レーダーによる位置確認はパイロット間の常識と聞いており、機長が正常の乗務を行っていて、レーダーを時折チラリとでも見ていれば、あのような事故は全く起こり得ないのである。妨害電波の有無はもはや問題にならない。つまり、あの ソ連の防空識別圏間際のコースを飛びながら、数時間にわたって位置確認を一切しなかったという信じ難いような怠慢をしていたか、もしそうでないとすると、それこそ考えるだけでも身震いを禁じ得ないのであるが、「故意」に領空侵犯したということになる。このうちのどちらかが我々の家族を乗せた飛行機のコクピット内で進行していたに間違いない。

しかもR-20の途中三ヶ所の義務位置通報点を通過したことをアンカレジや東京へ事実連絡しているのであり、位置確認もせずに通過報告をしていたことになる。このような目茶苦茶な乗務がありうるのだろうか、あってよいのだろうか?

 いずれにしても、妨害電波によって、「操縦士の乗った」飛行機がかくも長時間にわたって最大五〇〇㎞ものコース逸脱をすることは全くあり得ないのである。むしろ、ソ連軍機による銃撃経験を持つKALの機長が、パイロット間では周知の撃墜警告の出ている地域の飛行に際して先に述べたような乗務をしていたことが問題なのであり、そのことこそが撃墜という痛ましい事故に到った主要な原因なのである。

このようなことさえなければ、強制着陸から撃墜へと移りかわって行ったあの九月一日午後には、両親を成田に迎え、土産話を聞きながら三ヶ月振りでの楽しい夕餉の時を持つことも夢ではなかったはずなのであるが・・・・・・

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