Ⅳ-3:悲しみのなかで:川名庸子 (川名広明母)

川名庸子 (川名広明母)

 花のたよりに春を感じます今日このごろですが、私共は今まだ、口惜しさと悲しみの中におります。

 そして「ただいま、遅くなってしまって」と帰って来るような錯覚まで起こしてしまいます。元気で日本を出発して二ヵ月後に、こんな悲しい事件が起ころうと誰れが想像したでしょう。はじめての渡米、エール大学での研修で得た貴重な経験、友人達から学んだものや、楽しい想い出、将来への希望をもって幸福感にひたりながら機に乗ったことでしょう。

 しかしソ連の非情なミサイルで一瞬にして命を奪われてしまいました。しかも当日は、彼の二十才のお誕生日でした。どんなにか残念で口惜しかったでしょう。人生にはいろんな事がありますが、私共が子供を失ってしまうとは、今まだ信じられません。

 アメリカ諜報機関が仕組んだとも云われる、アメリカも憎いし、乗客を安全に運搬する義務のある、大韓航空も憎い、又いかなる理由があるにせよ旅客機をミサイルで撃つなど、ソ連の蛮行もなお許せません。しかし大国相手にはどうにもならない現状です。が二度と再び このような悲しい事件を起こしてはなりません。この様な悲しみは、私達だけで充分です。そのためにも私達は、厳しい北の海の現実、戦争の恐しさ、平和の尊さを、世界中の人々に訴え続けていかなければなりません。そして犠牲者の皆様に安らかに眠って頂けるように慰霊碑を建て、私達の手で守ってやらなければならないと思います。

 なお末筆になりましたが、主人も会長として至らない点も多いかと思いますが、会がここまでやってこられたのも、皆様の御協力と御支援のお陰と心から感謝して居ります。どうぞ、 今後ともよろしくお願い申し上げます。

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