Ⅰ-1:事件について考え、思うこと:大阪智子 (大阪徳之妻)

大阪智子 (大阪徳之妻)

真相究明について
撃墜されたという事実以外、今だに真実は隠されたままであり、日本、アメリカ、ソ連の各政府及び、KAL側は知っていながら発表をしないという事に私達は不信感で一杯です。私達にはそれを知る権利があります。憶測や想像的な答えが勝手に一人歩きをし、ただのニュースでしかなくなっている現在、真相究明に関して、四者に公開質問状などの形を取って、解答を求める必要性があるのではないでしょうか。今までの発表通りということならば、それなりの確証を取り、一つ一つの解答を整理・検討をして、反論の糸口を見つけだす。

対ソ、対米に関して
欧米人は感情論より合理的な論理で、物事を進展させていると言う事実を踏まえて、追求する方が良策であると思います。日本政府にこれが国家的な事件である事を、認識させねばならないのです。

KALの対応について
 KALのまったくの誠意のなさに、怒りを感じると共に、奇弁的・犯罪的態度に対して、マスコミ等の無批判な報道を修正してもらわねばならないと思います。KALはこの事件が人々の脳裡から、忘れさられる事を待っているのは過去の例でも明らかであるからです。マスコミに対して私はもっと積極的に忘れさせない事がKALに対する一番の良策ではないでしょうか。それはKALという航空会社のイメージダウンを計る意味に於いて企業にとって、もっとも恐れる抗議であるからです。

事件の背景
もうすぐ二十一世紀を迎えようとしている人間の文明も文化も、ソ連・アメリカと言う二大国の馬鹿馬鹿しい程の相互不信とエゴイズムの結果、原始的なまでに狂暴性をあらわにさせられ、私達の親・兄弟・夫・妻・子供はその犠牲にさせられてしまいました。それはまさに生贄でしかありません。そうした状況を作り出したこの二大国と、それと知りつつ危険を犯したKAL、放置した日本政府の人命無視的な政治家達の思い上がりに対して、はっきりと不信の念を表現したいのです。それは日本に於いて、与野党を問わず全ての政治家に対する不信であり、彼らの相互不信のなせる罪過が、この事件の全ての背景であると私は思います。

個人としての心情
 家の大黒柱が居なくなって、私たち母娘が毎日つらい日々を送らなければならないのが今だに納得がいきません。今まではお父さんがいつもいるのがあたりまえの様に思っていました。私達夫婦は結婚十二年(少したりなかった)楽しく、幸せに暮らして来たのに、何故この様な目に合わなければいけないのか。現在私は生前主人がやっていた店を、引きついでやって居ます。それまで二軒あった店を一軒にして馴れない商売をやって居ます。経験もなくなれないものだから、失敗ばっかりやっています。それでも以前のお客様が来て下さいますので、なんとかやって居ますが、主人と二人でやっていたらなあと、つくづく思います。主人が残してくれた最大の財産は友達なのです。私達の事を心配して、色々相談に乗って頂いております。

 夜、娘二人を置いて仕事に出る時は後髪を引かれる思いで出かけます。娘たちはそれなりに母親が何故働きに出かけるのか、分かっている様ないない様な毎日です。でも二人で食事をし、後かたづけをし、ふとんを敷いて寝ます。仕事の合間を見て「おやすみ」の電話をかけますが、忙しくしているとつい忘れる時が度々あります。家に帰ると手紙が置いてあり、「お母さん、つかれたでしょう。早くねて下さい」と書いてあります。そして子供の寝顔を見ながら、私も寝ます。

 夜どんなに遅く帰っても、朝は必ず、ごはんを食べさせて、学校へ送り出します。

 それからもう一度私は寝ます。毎日これのくり返しです。

 母娘たちにとって、お父さんの存在がいかに大きかったか今になって分かりました。その大きさは、色々な友達が居てもさびしさを感じさせる事でしかないのを、どうすればいいのかわかりません。

 子供のお父さん、主人を返してほしいのです。

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