おわりに:小林啓一郎

 私達にとって忘れることのできない事件発生の日から一年経った今日、遺族会文集第二集を刊行することができました。
 この一年間、本当にいろいろなことがありました。私達にとってすべてが初めての事ばかりでしたが、その時その時を「悔いが残らないように」、と川名会長をはじめ、それぞれの立場で一生懸命やってきました。
 しかしながら、残念なこと、悔やしいこともありました。
 一、真相を当然知っているはずの諸国が、口をつぐんですべてを隠してしまったこと。
 一、事件に大きな責任を持つ大韓航空が、被害者を装い、謝罪の意を一切表さぬこと。
 一、民間航空機を撃墜し、唯一つの罪もない乗客二百四十名の命を奪ったソ連が、謝罪の意を一切表さぬこと。
 突然、家族・肉親を奪われた私達は、未だに家族の生存をさえもあきらめ切れない、辛い一年を過ごして来ました。そのような私達の気持や考えが、六月に刊行しました文集第一集と、この第二集に凝縮されています。
 第二集では特に、犠牲者の遺稿を取り上げてみました。とても素晴しい文章ばかりで、私達もお互いに知ることのできなかった方々の人柄が偲ばれます。
 この第二集が、第一集と共に、遺族内のお互の理解に役立てば幸です。また肉親・親族でない方々にも、私達の気持や真相を知る願い、戦争のない本当に平和な世界を望む願いを理解して頂ければ、これに優る喜びはございません。
 ユニ企画印刷・橋本昭久氏には、第一集にもまして未整理な原稿から、私達の無理な願いをいれて短い日数でお作り頂きました。この御協力なしには今日の日に間に合わせることはできませんでした。私達一同心からの感謝の意を表します。
                    一九八四年九月一日
                      遺族を代表して 小林啓一郎

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