Ⅳー23:電話:羽場由美子 (羽場弘樹母)
電話のベルが鳴ると
もしや弘樹からではとはっとします
“おれ弘樹弘樹”とせっかちに
必ず自分の名前を二度繰り返す
少し遅くなるときまって電話をし
“遅くなってごめんね”って言いました
九月一日は成田から電話をする筈でした
電話があったら真先に
上級クラスになった事を
知らせてやろうと思っていたのに
あの子は知らずに逝きました
アメリカへ電話をしてやればよかった
どんなにか喜んだでしょう
今どうしたら知らせる事が
出来るでしょうか
私は何年も何年も
成田からの電話を持つでしょう