Ⅳー14:母へのてがみ:武本由香利(武本富子長女・潔典姉)

 一九八三年八月三十一日午前九時(日本時間午前十時)、私は母に手紙を書いていました。ちょうど母と弟の乗った飛行機がアンカレッジの空港を飛び立った頃だと思います。

   ママこんにちは!きのう別れてからだいぶ経った様な気がするけれど、ママ達はまだヒコーキに乗っているんですものネー。少しは眠れましたか?
   私は今、これを大学の中のボーホールというビルで書いています。このビルの二一一教室でこれから人類学の授業があるのです。早めに着いたのでまだ時間があります。今日でこの授業は二度目。ホラ、この授業の先生のことですよ。広島大学にいたことがあり、日本に大変興味をもっている先生。きのう私が話してたでしょ。
   ところで、きのう初めて社会学の授業があったわけなんですが、私はママ達と別れたあと社会学が行われるビルに行ったけど、教室がなかなか見つからなかったの。だから、むこうから歩いてきた、かっぷくがよくてすりきれたジーンズをはき、アンダーシャツがズボンからはみでている黒人の男の人に聞いたの。そしたらニッコリと親切におしえてくれました。ホっとして、その教室に入り、授業が始まるのを待っていると、授業開始のベルとともに、なっなんとその黒人の男の人がはりきって入ってきたのでした。用務員のおじさんだと思ったその人は私の社会学の先生だったのでーす!人は見掛によらないですネ。
   今回私がとったクラスは、どういうわけかどれも人数が少なく、一番多くて二十五人くらいです。だからなかなか緊張しています。
   このカードの絵かわいいでしょ。お洗濯好きのママにぴったりの絵!
   それではこの辺で。帰国して少なくとも一週間ぐらいは何もしないで、ゆっくり疲れをとってね。体をこわさないように!また書きますね。
    大好きなママへ
                    ゆかりより
   ※のんちゃんによろしく。「ウォークマン」本当にありがとうって伝えてね。

この手紙は九月五日、無事に日本に着きました。母と弟はまだ着いていません。

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