Ⅳー7:孝行息子を奪われて:小林りん (小林正一母)

 九月一日、嗚呼嗚呼苦月一日、何たる悲しき日ぞ。罪無き人々大勢が、あっと言う間に亡き人とされてしまった。私には唯一人だけの息子、善良なる孝行息子夫婦を一瞬にして奪い去られてしまった。
 息子は、幼少の時から何時も私を喜ばせてくれる子であった。友達からは親切にされるし、学校の先生からは誰よりも一番に可愛がられて私を喜ばせてくれた。「小学校から大学迄」私を怒らせたり悲しませたりした事は一度もない。二十五才の時、牧師様から紹介されて二才年下の方と結婚をした。心身共にしっかりしていて私にも親切であった。一女と一男が生れ、その子供も申分無く育ち皆が全く幸福に楽しく暮していた。そして退職後はあの別荘でああしてこうしてと、ちゃんと老後の計画も建てていた。
 それがそれがいやはや永遠に返らぬ人となるとは。鳴呼可哀そうに可哀そうに。私は毎日夜も昼も二人の写真を眺めてあの世での幸福を祈っている。天の神様どうぞ御許で安楽にお守り下さい。

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