Ⅳー2:題なし:美濃部圭介 (大背戸みどり初孫)

 ゴォー あっ飛行機だ! どこのだろう? どこへ行くんだろう。
 音が聞こえると、つい空を見上げてしまう。それが夜だったりすると、あれがHL7442ならばなぁーと思う。SFでよくあるように、ある日急に日本の上空にでも出現して、成田辺りに着陸してくれればいいな。

  大背戸みどり様
 八月二十三日に東京で出したハガキ以来、十一ヶ月ぶりに手紙を出します。高校受かったら出そうと思っていたけど、今までのびのびになっちゃった。今は県立並木高校で一年五組 のマァ級長みたいなものをしています。
 水泳部ができなかったのでちょっと不満ですが、enjoyしています。
 八月二十三日のハガキは、搭乗前(「帰国」前ではありません)に着いたようでよかった。あの日は新大久保には行けなかった。でも、九月十二日に行ってアイスクリームを食べてきました。九月のはじめは大変だった。親が二人共留守にしていたので、先ず「めし」を作らなきゃいけない。それが長く続いたので、「洗たく物」がたまる。洗わないと着るものがない。「布団」も干さなきゃいけない。この布団には困った。干して学校に行った途端に雨が降ってきて、近所の人がとりこんでくれたけど、一枚駄目になった。本当に「主婦」みたいなことをやっていた。こういう時の為に、やっぱり「男子にも最小限の家庭科は必要」です。 でも体育の授業はけずらないで欲しい。やめましょう。ここはこういうことを論じる場ではなかった。
 では、夏休みに北海道稚内沖の海上でお会いしましょう。     再見。

     一九八四年七月十三日金曜日午前零時五分
      (あっまた十三日の金曜日だ。)
           美濃部圭介

 読者の方へ 祖母が渡米したのは、一九八三年五月十三日金曜日でした。   END

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA