Ⅲー1:「トミちゃん、元気ですか?」:※※和香 (河野富子さんの友人)
「もしもし、トミちゃん、元気? 今京都駅に着いたの。今からそっちへ行ってもいい?」
「アッ、和香ちゃん、久し振り、元気だった?待っているから早くおいでヨ。」
これが私達のいつもの会話でした。トミちゃんと私が出会ったのは、今から六年前でした。フジテレビの大奥の話で、「徳川の女たち」というテレビドラマに共演したのがきっかけでした。初めてトミちゃんに会った時から、昔からの知り合いのように意気投合し、私達はすぐに仲良くなり、私は横浜に住んでいるので、京都での時代劇、大阪での仕事の時は、いつも彼女のお宅へお邪魔させてもらっていたのです。
その後「遠山の金さん」、「必殺仕舞人」というドラマで共に仕事をした訳ですが、増々仲良くなり、仕事を離れてもおつき合いするようになったのです。
彼女との想い出は沢山あります。
私が行く度に作ってくれたビーフシチューの味、そして寝苦しい夏の夜、なかなか眠れなくて二人で買いに行ったビールの味、そして私が作ったツナサラダをレタスに巻いて、おいしいおいしいと言ってくれたあの笑顔、二人で神戸に買い物に行った時の事など、私の心の中に色々な想い出が刻み込まれています。私の心の中にはトミちゃんは生きています。
ニューヨークからの何通かの手紙、本当に元気そうで、希望に胸をふくらませていた彼女。私には、まだトミちゃんがどこか外国で生活しているような気がしてなりません。
生きているという事は一体何なんでしょう。
ソ連のミサイルによって故意に撃ち落され、一瞬のうちに打ち砕かれ、今までの生活、そして希望、将来への夢がすべて「無」になってしまったのです。
あまりにも無常すぎます。
トミちゃんへ
「トミちゃん、早く日本へ帰って来て!!」
そして、トミちゃんの御家族の方々をはじめ、仲の良かった友達、仕事仲間をアッと驚かせて下さい。
その日が来るまで、私はあなたとの想い出を、大切に大切に、いつまでも持ち続けていますから……… 。
ではトミちゃんも、私との楽しかった想い出をたまには思い出してネ。
和香より