Ⅰー6:ボストンからの手紙:岡井 真
・・・・・・母さん It is important thing.
(これは重要なことだけど) KALは絶対に乗らない方がいい、North west でくるべきだよ。・・・・・・
父さん、昨日、おやじの夢を見たよ。空港で、あの時、父さん、かっこよかったもんな、別れって、あんなものなのかな?少しあっけなかったよ、でも、サッパリしてていいや、本 当の別れじゃないし・・・・・・
一九八〇年六月二十二日
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この手紙から三年過ぎて、大学を卒業した真は、日本へ帰る飛行機を、ある理由で、KALにしている。それは、運命の○○七便であった。父と母の別れは、一九八〇年六月十九日の「さっぱりした別れ」が「本当の別れ」となってしまったのである。
オジンの父は、悲しくても涙をみせない、うれしくても笑うことも出来ない世代に育った。あのとき、私は「別れ」にてれて、かっこよくあったであろう、さだかな記憶がない。
(岡井 亭)