はじめに:中沢健祐 (中沢建志父)
中沢健祐 (中沢建志父)
あのいまわしい事故の日、九月一日が後少しでやって来る。私達家族、いや全遺族の方々も、あれからもう一年近くも経過してしまったのに、まだ三ヶ月位の月日しか過ぎていないような気持ではないでしょうか。
ニューヨークで飛行機に搭乗する時は、一夜明ければなつかしい肉親や友人の顔が見られる、こんなこと、あんなこと、失敗談でも話そうか、と楽しい思いで機内に座ったことだらう。またどんな気持で一夜の夢を結んでいたことでしょう。もう帰って来ない現実と、今にも玄関を開けて「やあやあ遅くなって御免」と云いながら帰って来るのではないかと思う気持で、心の内は揺れ動いております。九月一日の一周忌に当り、船上慰霊祭の参加も、墜落地点と思われる海上に到着した時の気持を考えると、陸地よりはるかなる北の海に思いをはせたほうがいくらかでも気持が安らぐのではないかという思い、複雑な気持で一杯です。
この悲しみ、苦しみは決して一生いえるものでは有りません。
被害者だけで、誰が実際の加害者なのか全く解らない事件、こんなことでよいのだらうか。真相究明もいろいろな厚い壁に阻まれて困難な現状です。しかしながら犠牲者の霊を慰めるためにも、もう二度とこんな事を起してはならない。平和がどんなに大切か、人の命がどんなに尊いものか、私達は平和な国際関係をつくるためにも真相を明らかにしなければならないし、努力しなければ、と思います。
今回の第二集は、遭難者の遺稿、及び親族の方々に筆をとって頂きました文を主体にまと めました。御一読お願いします。